スマートフォンゲームが幅を利かせている最近のゲーム業界。かくいう私もスマートフォンゲームに、かなりの時間とお金と労力とをつぎ込んでしまっている。今、一番好きなゲームは何かと聞かれれば、やり込んでいるスマートフォンゲームの名前を挙げるだろう。しかし、今までで最も人生に影響を与えたゲームは何かと聞かれれば、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』と答えるだろう。歴代のゼルダシリーズは代表的な作品を6本ほどプレイしているが、そのデザインの秀逸さと世界観の壮大さ、そしてストーリーの重厚さには、いつも感嘆させられる。この『HYRULE HISTORIA ゼルダの伝説大全』は、ゼルダの伝説25周年を記念して発売された、ゼルダシリーズの歴史やキャラクターの没デザイン、設定資料などを収録した任天堂公式ガイドブックである。『ゼルダの伝説』から当時の最新作であった『スカイウォードソード』に至るまで、歴代作品の時系列や相関関係が詳しく解説された、ゼルダファン必見の一冊だ。シリーズ全体を概観するような内容のガイドブックになっており、キャラクターデザインの変遷をまとめたページでは、歴代のリンクやゼルダ、ガノンドロフのデザインを一度に見ることができるようになっている。リンクといえば緑の衣に三角帽子、そして両手に剣と盾を携えた勇者だが、この基本のデザインは『ゼルダの伝説』から『スカイウォードソード』まで変化していない。しかし最新作の『ブレスオブザワイルド』ではメインの服装は青色に変更され、「ゼルダのアタリマエを見直す」というコンセプトのもと制作された作品であることを強烈に印象付けた。また、『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』で初めて登場したキャラクターである「チンクル」の設定資料の書き込みの多さには、製作陣のチンクルへの思い入れの強さを感じた。チンクルはその後、ゼルダシリーズでもキャラの濃さでは随一を誇るキャラクターとなって歴代作品に登場するようになり、『ムジュラの仮面』では特に活かされなかった「さまざまな地図を解読する能力も持つ」という記述も『風のタクト』ではしっかりと重要な役割を果たして活かされているのだから、キャラクターを作り上げる上での設定を練り込むことの重要性がよく分かる。私が『HYRULE HISTORIA ゼルダの伝説大全』で特に読み込んだのは、歴代作品の時系列と相関関係についてだ。ゼルダシリーズは作品によって世界観やゲーム自体の雰囲気がガラリと変わるため、普通にプレイしている時に個々の作品の相関関係を考えたことはあまりなかったのだが、実際には歴代のすべての作品が組み込まれて作り上げられる『ハイラルの歴史』が存在していたということを、このガイドブックを読んで初めて理解した。キャラクターや魔物のデザインのような本当に細かい設定から、シリーズ全体を包括した大きな世界の設定まで、とことん突き詰めて練り込まなければ、人の心に残る重厚なストーリーを作ることはできないのだろう。