2019年01月24日 03時49分

もうひとつのチョコレート作品

Satsuki.k

大石真 「チョコレート戦争」

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『チャーリーとチョコレート工場』は言わずと知れた、世界的に有名な児童文学である。2005年にティム・バートン×ジョニー・デップの名コンビによって映画化もされ、あの独特な世界観とチョコレートという子供から大人まで誰もが大好きなお菓子を題材にした作品は皆を惹きつけた。

私には『チャーリーとチョコレート工場』を聞くと思いだす、もう一つの"チョコレート作品"がある。それが今回書評を書く、大石真作『チョコレート戦争』である。

60年安保闘争や東京オリンピックを経て、経済的に飛躍的な成長を続ける一方、さまざまな社会のひずみも見えてきた時代を背景に、強権的な大人に対抗する行動力あふれる子どもを描いた長編物語。ある地方都市の高級洋菓子店、金泉堂。ショウウインドウにはチョコレートの城が飾られ、子どもたちのあこがれを一身に集めていた。ある日、そのショウウインドウのガラスが音をたてて砕け散る。たまたまそこに居合せた光一と明は、有無を言わさずガラスを割った犯人にされてしまう。とりあえずは、学校の先生にその場を納めてもらうが、一方的に犯人と決めつける金泉堂の支配人や社長の金兵衛氏の態度に、少年たちの悔しさはつのる。そこで光一は、抗議として店のシンボルであるチョコレートの城を盗み出す計画をたて、一方明は、学校新聞にこの事件をとりあげて大人の横暴さを訴えようとする。ところが、チョコレートの城を奪うという計画は、金泉堂に事前に漏れてしまい失敗。しかし、学校新聞の方は多くの子どもたちの心を動かし、ケーキ不買運動が広がる。大量に売れ残ったケーキを前に、金泉堂の大人たちは頭を抱え、さらにこの事件を知ったトラック運転手が真の犯人だと申し出るに及んで、子どもたちの逆転勝利は決定的となる。やがて子どもたちの学校には、金泉堂から、おわびのケーキがとどけられるのである。

この作品は当時小学生だった私にとって、まさにリアルと夢の入り混じった作品であった。学級新聞や校内放送など、小学校ならではのメディアを駆使して団結した子供たちが、理不尽で頑なな大人に勝利する…あの大人たちの顔を見たときの爽快感と計画が成功するかのワクワク感は誰もが一度は想像したり妄想したことがあるのではないだろうか。

またこの作品には金泉堂の様々な洋菓子が登場する。特に私の記憶に鮮明に残っているのが「エクレア」だ。

『エクレール — それは、シュークリームを細長くしたようなもので、シュークリームとちがっているのは、表面にチョコレートがかかっていることだ。これをたべるには、上品ぶってフォークなどでつついていたら、なかにいっぱいつまっているクリームがあふれだして、しまつのおえないことになる。そばを、つるっとすくってたべるように、いなずまのような早さでたべなくてはならない。』

その当時私は「エクレア」という食べ物を知らず、きっと高級な洋菓子の1つで私たちの生活の中には普段ないものなのだろうと思っていた。だから近くのコンビニで100円ちょっとで売られているエクレアを見つけたときの、あの衝撃は未だに忘れられない。そして今でもエクレアを食べる時はこの一節を思い出し、口を大きく開けて一気に押し込み、”いまずなのような早さ”で食べきる。

「子供×チョコレート」を題材に扱った作品は、いつでも子供の頃のワクワク感や新鮮さを思い出させてくれる。これから先、年を重ねて行っても、時に振り返って童心を忘れず、また子供にも引き継いでいきたい。


この書評のリレー元書評:




2018年12月18日 09時16分

工場で問う

河本のぞみ

ロアルドダール「チョコレート工場の秘密」

 私は、SF作品を映画で観ることはあっても小説で読むことはあまりなかった。今回の課題は文学作品から選ぶということだったのでネットで調・・・

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