多分この本を初めて読んだのは小学生かそこらだった。時々、しかし何度もこの可愛いらしい装丁を母親の本棚から取り出してこっそり読んでいた。というのも、小学生の私にはこの本の内容はあまりに衝撃的だったのだ。繰り返し読んでいたのは、恐ろしくも覗き見るのをやめられない本だったからだ。子供なんかに言わないような赤裸々な話をここでは読めた。「おばさん」たちはこんなことを思って生きているのか、それを知るのが楽しかった。禁書とはこんな感じなのかもしれない。ロリコン趣味だとか、熟女のグラビアだとか、セックスレスだとか、コムスメだとか。大っぴらに読んではいけないのだろうなと思ったし、それらのワードはまだ老いるなんてことを感じたことのないピュアな私にとって強烈な「教育」だった。 「白髪混じりの三つ編みだけには、したくない」「十一歳とかでも、『アタシももう、歳ね……』」 老いるということ、それを食い止められず恥じている筆者やその友人たちの文言の一つ一つがしっかりと私の脳みそには刻まれていた。無意識の中で、歳をとることは恐ろしいこと、肉体も精神も老いることは止められない、そんなことを小学生の私は何度も反芻していた。
そして、つい最近改めてこの本を良い返してみた。もしかすると一見、内容は時代遅れなのかもしれない。女性の価値は若さではないし、老いることに否定的になってはいけない、と言われるだろう。もちろん本書ではそのことにも触れてある。しかし、それでもこの社会で生きている中で老いを恐れることは不可避だ、と筆者は言う。それは、若さと老いと結婚と仕事だけではなく、老いへの新しい価値観と否定されたそれまでの価値観との間で溺れかけている「おばさん未満」の女性の叫びだ。古い価値観の中で歳を重ねてきた自分たちのあり方を、新たな価値観の世界でなんとか見つけようとしている。当時はセンセーショナルな言葉に眩んでいたが、改めて読み返してそのことが分かる。この本から受けた教育は私の奥底にずっとこびりついていたが、もうそろそろ引張がせるかもしれない。