「are we human?」デザインのスケールを見直し、広義的な意味としてのデザインの認識から始まる本書は、人間ーデザイン間を幾多も飛び交う双方への矢印を柔軟に解釈する。
キーワードとして『リ・デザイン』が頻出されているが、私はこれに対する第一印象に社会学的な意図を持った。既存の人間、と称される存在を周囲の環境を含む様々な枠組みにおいて捉え直し、改善していこうとする取り組みである。そして、人間はそれまでに無かった動作や、習慣や、考えを手に入れることとなる。これは人間そのものの機械化、あるいはポスト・ヒューマンへの着地へと舵をとる意味合いを孕むと同時に、「人間の再発明という非人間的行為が最も人間らしい(本書より抜粋)」というデザインが取り巻いているスパイラルの図式が分かりやすく記されている。
人間の行為は絶えず新しいシステムや機械とともにデザインされているにも関わらず、非人間的再開発の手を止めないという点ではある種変化ない営みなのだ。
ロバート・モリスは機械に対し人間が消費されることに苦言を呈した。
デザインの支配の試みはデザインの奴隷となって返ってくる。
ウェブに包括された莫大な世界のために、我々はモバイルの小さな画面を覗き込む。小さなデバイスに集約させようと試行錯誤する。所感と事実規模のギャップは縮まらない、だから気付き難い。
啓蒙的に感じる箇所もいくつかあるかもしれない。あるいはその問いは、皮肉めいたものに感じられるかもしれない。
しかしそれでも私は首を縦に振るべきであると感じた。
本書は章に細分化されているが、オムニバスではない。
全てが1つの事実提示に繋がっており、それをどう感受するかは読者に委ねられている。
私はデザインの影響力を改めて理解し、今日求められているデザインというのはそれ自体は小規模であるとしても、大きなコミュニティやシステムを前提とした連続的なものではないかと解釈した。
また、デザインはアートや創作物との境界が曖昧で差別化が困難である以上、今回様々なシステムやプロセスを含む事象をデザインとして取り扱うのであれば、筆者がデザインと定義する範囲を明示する、ほのめかす場が設けられているとより説得力が高まるように感じた。