2019年01月16日 21時46分

アンを追って

Satsuki.k

モンゴメリ 「赤毛のアン」

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言わずと知れた、モンゴメリの代表作「赤毛のアン」シリーズの一作目。日本では「花子とアン」など、赤毛のアンの翻訳家として有名な村岡花子の生涯を描いた連続ドラマが放送されたり、昨年亡くなった高畑勲によってアニメシリーズ化されたりしており、誰もが知る作品であろう。老若男女問わず愛される不朽の名作の1つである。

私はこの作品を人生のバイブルとしている、というと大げさではあるが、人生のところどころのターニングポイントでお世話になったことは間違いがない。大きな決断をするときや迷ったとき、何もかもが嫌になったとき、いつも立ち止まってこの作品を振り返った。主人公アンの豊かな想像力と前向きな姿勢、そしてそれらを丁寧かつ綺麗に表現してくれる言葉の美しさが、いつでも私を押し上げ、やる気に満ちさせる。

またこの作品の魅力の一つは、愛情あふれた登場人物たちである。里親であるマリラやマシューはもちろん、アンが出会う人々みなが「いい人たち」なのである。各々の性格や個性の中で葛藤や衝突はあるものの、だれも悪い人はおらず、どこか人間味あふれた人たちの中にかこまれて、孤児院で育ち11歳まで愛情を知らずに育ったアンは、素直にまっすぐに育っていく。

私が初めて赤毛のアンにふれたのは、小学生かそれ以下の年頃であったが、どんな時でも私を勇気づける1つのエピソードがある。

(ここから先はこの物語の最終部分になってしまうので、話を知らない人は読まないでいただきたい…。)

秀才で勉強が良くできたアンは、クイーン学院という島の学校にトップの成績で入学・卒業し、夢であった先生の資格も得て、名誉ある「エイブリー奨学金」の受賞者に選ばれる。念願の大学への入学と奨学金を得て、将来への道が大きく開き、幸福の絶頂にいたアンであったが、悲劇は突然訪れる。一家の長であり父のように慕ったマシューが亡くなり、財産も銀行の倒産によりすべて失うのだ。一夜にしてアンの道には大きな壁が立ちはだかり、アンは進路の選択を迫られる。誰もがアンに同情し哀しみの視線を送る中、アンはひとり、大学に行かないことを決断する。そしてこれからの希望と野心に燃えた目をして、前向きに新たな将来への抱負を語るのである。「神は天にいまし、すべて世は事もなし」、このブラウニングの言葉でこの物語は締めくくられる。

人生において、万事うまくいくという瞬間はいつまでも続かない。いいことと悪いこと、波のようにそれらは訪れる。

しかしどんなに悪いことが起こっても、辛いときがあっても、この世は続く。そして何事も必ず先とつながっているのである。

たとえ思っていた通りの道に進めなくても、前向きに明るい先を信じていれば、きっといいことは訪れると、私はこの本から学んだ。