2019年01月16日 09時48分

牢獄からの上京

酒井優太

夢野久作 「恐ろしい東京」

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 私は現在東京で暮らしているが、大学に入るまでは佐賀の山の中で中高6年間寮生活を行っていた。テレビや携帯電話もなく外部の世界とは隔離された中で生活を送っていた。一日の中での楽しみは湯船で流れるプールを作ることくらいだった。アナログな生活を送っており、世の中の他の学生たちの間でどんなものが流行しているのかなどは全く分からなかった。そのような生活を送っていたからこそ、この作品を読んで共感を覚えるような場面も少なくなかった。

 この作品は、東京通であると自負する筆者が久々に上京すると電車に乗り間違えたり、電車の自動扉に突き飛ばされたり、数々のトラブルに巻き込まれていくというストーリーである。特に、自動扉に突き飛ばされるシーンは筆者の笑いのセンスも感じ取られ、くすっと笑ってしまう。同じ福岡出身ということもあり、夢野の東京での体験には共感できることも多い。私は、大学に入るまでは電車に乗る機会はほとんどなかったので、東京に出てきて地下鉄の本数の多さには大変驚き、こんなところで生活できるわけないと絶望した。また、彼は東京人=嘘つきというイメージを持っている。

 筆者は、文章の中で東京人=嘘つきというイメージを持っている。人は、自分が体験したことがない世界に対してはどうしても先入観を覚えてしまいがちである。自分は少なからず、上京する前までは東京は人が多くて冷たい人が多いというイメージを持っていた。そのイメージは数年東京で過ごした今でもあまり変わってはいないが。

 初めて体験することに対するイメージは触れてから、そのイメージが変わることもあるし、そのイメージ通りのこともある。悪いイメージを持っていたものに触れて、実はよいものであったことに気づくこともあれば、その逆もある。私は、物事に対して初めから良いイメージを持たないようにしている。なぜなら、よいイメージをはじめから持つと、触れた後に良くないと気づくと個人的にあまりいい気持にならないからだ。物事に対する考え方は人それぞれだと思うが、自分が一番心の兵をんを保ちやすい考え方を持つことも人生においては少しは重要なのではないかと思う。

 

 

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