2019年01月16日 17時08分

「たいせつなこと」を再考する

さくら

サン・テグジュペリ 「星の王子さま」

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 1943年、ニューヨークで出版された童話『星の王子さま』は、現在では200以上の国と地域の言葉に翻訳され、ロングベストセラー作品となっている。おそらく、誰もがこの作品の名前を耳にしたことがあるだろう。その一方で、『星の王子さま』について説明することができる人はどれほどいるのだろうか。

 私は大学生になって初めてこの本を読んだ。率直に「これ、童話なの!?」と思った。つまり、とても子供のためのお話とは思えないくらい私にとっては難しく濃密な内容だったのだ。とにかく、小さな星から地球にやってきた「星の王子さま」が発する純粋無垢な言葉を咀嚼するのに時間がかかった。

 物語は、パイロットである「僕」が飛行機の故障でサハラ砂漠に不時着したところから始まる。そこで「僕」は、金色の髪をした不思議な少年、星の王子さまと出会う。そして、飛行機の修理をしながら王子さまの物語をたどっていった「僕」は、彼のことを知るに連れ、見えなくなってしまったはずのものを見つけ出す。簡単に説明するとこのような物語だ。ここで、王子さまが地球にたどり着くまでの経緯についても手短に説明しておく。まず王子さまは自分の星で咲いているバラの花と仲違いをし、家出ならぬ星出を決意した。そして様々な星を巡り、色んな大人たちと出会い、7つ目の星として地球にたどり着いたという流れだ。王子さまは、その旅を通して様々なことに疑問を持ち、気がつき、それを率直に言葉にするのだが、物語の最後の方ではこんなことを言っている。「星々が美しいのは、ここからは見えない花が、どこかで一輪咲いてるからだね……」。

見えるもの、確認できるもの、名前があるもの、説明がつくもの……。歳を重ねるにつれ、そういったものに価値を置くようになってきてはいないだろうか。この物語は、そんな価値観を一度解体し、再構築させてくれる。「たいせつなこと」を忘れた「大人」になった今だからこそ、大切に読みたい本である。