私はタイムリープやタイムトラベルのような時間をテーマにしたSF作品を探しました。そこで「たんぽぽ娘」という作品を見つけました。
この作品は1961年の小さな村を舞台として、マークという44歳の男が、240年後の未来から来た21歳の女性ジュリーと丘の上でお互いのことについて語るストーリーです。ジュリーは241年後の未来で父親が開発したタイムマシーンに乗って、1961年にやってきて、マークに241年後のこの村の状況を話します。2040丁目に住んでいることや、森がメガロポリスになったことなど。お互いに話を重ねるたびに仲良くなった二人は毎日この丘の上で会うことになりました。しかし、ジュリーの父が亡くなり、過去に来ることができなくなることを告げた日から、ジュリーは過去には現れることはありませんでした。しかし、マークは家に帰り、妻であるアンのスーツケースを見つけると、ジュリーの着ていたドレスを見つけます。そこで、20年前に一目惚れしたアンは未来から来たジュリーであることにマークは気づくのです。
この作品をデザインフィクションの観点で見た時、タイムトラベル、タイムリープにリアリティを与えていると言えます。私が一番目を引いた部分は過去の事象について未来人が干渉してしまうとのちの未来が変わってしまうとういう概念を否定していることです。未来の人間が過去に行くということは、過去において未来人の存在そのものが歴史的矛盾となってしまい、それを吸収する過程で未来が改変されてしまいます。これは未来において時間警察というものが提唱している考え方で、そのため過去に行くことができるのは国に認められたごく限られた者であるとされています。しかし、タイムマシーンを開発したジュリーの父親は巨視的に見れば将来起きる出来事はもうすでに起こっているという考え方をします。つまり過去の事象に関わるということは、過去の一部になるということで、もともとその人は過去の一部として内在していたと考えると、未来における矛盾は起こらないということです。これは過去の事象に関われば未来を変えてしまう未来警察の一般的な考え方に対するジュリーの父親の新しい考え方だと思いました。これはSF作品というフィクションでありながらもタイムリープにリアリティを与えている優れた表現だと考えました。そしてマークが妻であるアンは、未来から来たジュリーであると気づいた時、ジュリーがマークに会った過去の一部は、マークにとってジュリーに会う定められた未来であったことが述べられています。これはつまり、ジュリーが過去にマークに会ったということで未来が改変されたわけではなく、マークにとって未来でジュリーに会うという定められた未来における過去の一部であったということで、未来における矛盾は起きてないことが証明されています。タイムリープにおける未来と過去の関係がリアリティをもって表現されている部分がこの作品の優れているところだと考えました。タイムリープのやり方はタイムマシーンに乗ってきたというだけで、そこまで深くは追求されていません。しかし、タイムリープにおける、過去と未来の関係を物語におとして説明されていることがタイムリープにリアリティを与えていると考えました。