2018年12月20日 17時24分

鏡水敬尋 『夢の果て』

胡子美春

和田英 「富岡日記」

/* */ /* CONTENT AREA */ /* */

最初に、インターネットで見つけたものなのでタイトルと異なります。

見つけた経緯は、インターネットで無料で読めるサイトを見つけ、その中で50作品くらい読んで読み比べた結果、これが1番おもしろく技術描写が優れていると思い選びました。

次は、本の概要です。主人公のノボルは、歌手になり幼馴染のユミと結婚するのが小さい頃からの夢で、それを叶えることができた。しかしそれは仮想空間の話で、マシーンを使わないと実現できないのである。実際は平凡なサラリーマンだ。そのマシーンとは人間が夢を追い求めた結果生まれたもので、ノボルが生きている1990年のものではなく未来の2500年に造られたものだ。つまり、ノボルは1990年から2500年に連れてこられてきたのである。そのマシーンの中では、人間の肉体はなく、全て意識をデータ化されたもので、200億近い人間の意識がそこに存在する。人々は肉体を捨ててでも、現実より夢を選んだのだ。そして最終的にノボルも肉体捨て意識をデータ化するところで作品は終わりだ。

私がこの作品を良いと思った点は3つある。1つ目は、人間の意識をデータ化するという点である。固形の肉体を永遠に保存することは難しいが、無形の意識をデータ化し保存することは可能なのではないかと思うからだ。調べてみると、2015年にランダル・コーン氏が頭脳をデータ化してコンピュータにアップロードするシステムを発表したりなど、実現される日は近いと思われる。人間の脳は神経細胞でできており、その神経細胞は電気信号が司っている。つまり人間の脳はコンピュータと同じような仕組みで成り立っているのだ。脳のほとんどは機械的に動いており、その仕組みがわかれば複製は可能なのだ。既に脳の一部は複製されているらしく、脳全体を複製できる日も来るだろう。2つ目は、時間軸が動く点だ。過去に遡ったり未来に行ったりすることは誰もが一度はやってみたいと思うことだと思う。しかし、タイムスリップに関しては、意識のデータ化ほど確証のある仮説が存在しないように思われる。そのため、この小説でも時間軸が動いていることについては詳しい記述がなかった。その分まだ解明が進んでいないということも読み取れた。これからの研究に期待だ。3つ目は、人間の夢や欲望についての記述が多い点だ。今存在しているモノ・コトなど、人間が望んで生まれてきたものが溢れている。世界が発展したのも、人間の欲望のおかげだ。しかし、夢を叶えられる人もいる一方で叶えられない人ももちろん存在する。この小説では、夢を叶えられなかった人々は、肉体は滅びるがマシーンの中で自らの欲望のままに生きている。夢を追い求めた結果、自らは滅びてしまうのだ。デザインフィクションは全て人間の欲望が表れているが、デストピアになり得る。一見ユートピアに見えるものでも、実はデストピアだったりする。そのような皮肉も感じ取れる作品である。

#デザインフィクション演習