2019年11月11日 23時04分

頭の大きなロボットを読んで

かだお

星新一 「未来いそっぷ」

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この作品の中には非常に多くの現代技術が描写されている。生体認証(指紋認証、声帯認証)、言葉の記憶とその文字起こし(これは最近Googleにて実装された音声入力に酷似)などである。これらはいずれも製作者の「忘れっぽい」「他人を信用できない」というペインの解消を目的に実装されたもので、一見するとそのロボットの運用自体に何か懐疑的になって見ようとする必要はないかもしれない。しかしこのロボットの機能を過信した製作者は様々なトラブルに見舞われる。ロボットのロック機能が不完全だったことで機密事項が漏洩しそうになったり、声帯認証機能をうまく扱えず、自分の寝言や録音された自分の声でロックを解除されたり。星新一作品に登場するロボットは毎回どこかしらに不備がある。気まぐれロボット然り、ボッコちゃん然り。今回のロボットはそういったトラブルに即して製作者が新たな機能を付け加えていくが、追加されたデバイスにより身体が肥大化したロボットに指を潰され、指紋認証ができなくなり、内部メモリを取り出せなくなってしまう。この作品の中で語られる疑問とはテクノロジーの進化はとりもなおさず人間を幸せにするか?ということであると考える。機能が追加されるごとにだんだんと大きくなっていくロボットの頭は我々人間がテクノロジーに受け渡した人間活動そのものなのではないだろうか。何でもかんでも新しい進歩したテクノロジーが人間がすべき仕事を肩代わりし、コントロールできる手の内を大幅に超え始めたとき、人は技術とより良い形で生きていくことができるのだろうか?「きまぐれロボット」の主人公は完璧なお世話ロボットを貰うも、あまりに完璧では使う人間がロボットに依存し堕落してしまうのでいけない、という理由でそのロボットは定期的に故障する仕様であった。星新一は来るべき未来にあるテクノロジーに関する構想だけではなく、それを扱う人間の立ち振る舞いまでもを我々に問いかけている。便利で、夢のような機械が現実になりつつあるこの現代に、人間がすべきことは何か、できることは何かを念頭に置き、日々を送ろうと思った。