2019年11月09日 06時12分

未来の人間、永劫の存在

Jiyun KIM

Mur Lafferty 「Six Wakes」

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 宙航海が可能な遠い未来の物語。科学技術の発達で人間は永遠に死なずに記憶をつなぎながら生きていける時代が到来する。「SIX WAKES」はこのような時代に人間とクローン(クローン人間)の間の対立を越えて、遠い惑星に定着しようと向かう宇宙船を背景に6人の乗務員の間で起こる事件を扱っている。SF、空想科学、先端技術で武装したファンタジー的な要素が適切に結びついている時間つぶし用の小説だという予想とは違い、人間とクローンという存在及び遺伝子組み換えに対する社会的·倫理的·宗教的イシューを総網羅した問題意識を持ち出し、もしかしたら起こるかも知れない未来社会の恐怖と弊害を間接的に見せ、本を読む前に持っていた偏見を見事に打ち砕く。

 DNA操作は慎重にアプローチしなければならない分野であり、過去、現在を問わずいつも話題になっている。未来にもそれほど変わらないだろう。DNA操作によって必然的に発生する人間のアイデンティティと魂の有無、人間らしく生きることは何かなど、多くの疑問を投げかける小説である。ただ、小説の舞台を宇宙船という限定的な空間に制限し、その中で行われている乗務員6人の葛藤と彼らの過去の中で各人物同士の連結の輪を一つ一つ見せながら、DNA操作という命題に対して一種の解答または警戒心を高めてくれる。

 何世代にもわたってクローンという媒体で生まれ変わり、生まれ変わって最も強い権力と数多くの富を築いた「サリー・ミニョン」という女性起業家から物語は始まる。彼女は手段と方法を選ばず、社会的波紋を甘受してまで、様々な不法なことを行い、宇宙船の乗組員6人を募集して彼らと共に彼女を敵対視する人物たちを騙して遠い惑星の開拓者として送ってしまう。彼女はこの小説の中の真の悪党であり、最終ボスでもある。

 宇宙船が出発して25年が経ったある時点、6人の乗務員は殺害されてクローンで再び目覚める。25年の記憶は失われたまま。果たして誰が犯人で、どんなことが起こったのだろうか。小説はあたかも推理小説であるかのように疑問点をいっぱい撒き散らしたまま、読者の好奇心を刺激する。6人が宇宙船を搭乗したきっかけは、任務が成功した場合、犯罪記録をすべて消したまま新しい人生を生きることができるという希望があったからだ。しかし、見えない力によって彼らは互いに疑心暗鬼になり、結局は破滅の道に進む。その中には「自分も一役果たせる」という意志を持ってる人工知能「イアン」の登場と、人工知能に対する先入観を思い切って打ち砕こうとする作家の意図が小説のあちこちに分布され、緊張感と面白さをいっそう倍増させる。6人の人物と人工知能「イアン」はそれぞれ各自の切迫した事情を持っている。

 この小説の中で勝者はいない。皆敗者である。しかし、過去からつながっているすべての秘密が明らかになり、懺悔の過程を通じて、または許す過程を通じて乗務員は一段階成熟し、たとえ暗鬱でもかすかに漏れる希望という単語の存在を振り返り、小説は締めくくっている。宇宙船、宇宙植民地、クローンなどまだ慣れない単語だが、一方では胸をときめかせる未知の領域が与える快感がこの小説の中では確かに存在する。私たちの未来がこのように流れるという保証はないが、確かに経験してみる楽しさがこの小説の魅力ではないかと思う。

#興味津々