超歌手大森靖子が書き下ろしたこのエッセイは、エッセイというより大森靖子そのものだ。文字というメディアを介して彼女自身の思想や生き様が書き連ねられているのにも関わらず、そうとは思えないほど色濃く彼女の生を感じる。血とか鼓動とか息とか……。とにかく真っ赤で熱いものがこの本に宿っていて、それは彼女自身でしかないのだ。読んだら分かる。
この本をamazonでは、「現代を生き抜く至言満載!」というように紹介しているのだが、ちょっと違う。「現代」というより「自分」を生き抜く至言だと私は思う。それが現代を生き抜くことに繋がるのかもしれないけれど。というか、自分自身を生き抜くことが出来ればどんな時代だって誰にも殺されないのだ。
ここで著者の大森靖子について簡単に紹介したいのだが、彼女が持つ情報量があまりにも多すぎて簡単に説明できない。ただ、ロックを体現している女性であることは間違いなく言える。彼女の楽曲を聴くと、ロックバンドを名乗る多くのバンドが霞んで見えるほど、彼女はロックそのものなのだ。だから、本書だけでなくぜひ彼女の楽曲にも触れてほしい。彼女は音楽を、まるで身体の一部であるかのように、表現方法として自身のものにしている。私も音楽をしているのだが、彼女のように音楽を使いこなせない。だから、彼女の楽曲を聴くと感動と同時に悔しさが湧いてくる。ライブに行けば、この悔しさとリアルタイムで生きる彼女の美しさに殺されてしまう気がするから、まだライブには行けない。いつか私が私自身に自信を持てた時、彼女のライブと向き合いたいと今は思う。話が大幅に逸れてしまったが、今回この書評を通して私が発信したいことは、「美しく生きろ。」という著者の言葉だ。これほどまでに力強くて、鋭くて、真っすぐで、重い言葉があるだろうか。
みなさんは美しく生きていますか?
「美しい」ってなんだ?
そんな疑問と対峙しながら本書を読み進めて行くと、
「美しく生きたい。」
そんな感情がこみ上げてくるはずだ。