2018年12月21日 03時26分

夢の世界

生沼光悠

星新一 「ブランコのむこうで」

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SF小説について検索している中で、一番多くヒットしたのが星新一さんの作品だったことから、星新一さんのSF小説を読んでみたいという思いに駆られこの本を手に取った。この物語はある日主人公が学校の帰り道に、自分とそっくりのもう1人の僕に出会ったこのから始まる。気になってついていくと、知らない人の家にたどり着くがそこに入るともう1人の僕に手を引かれ、気がつくと目の前には知らない世界が広がる。そこは夢の世界だった。先ほど会ったもう1人の僕というのも、夢の中で僕を演じている子であったというわけだ。夢の世界では、現実世界の生きる一人一人に全く違う夢があるため1人1つずつ世界がある。また、現実世界でその人が寝ている時、夢の世界では夢をみる人が望む夢を見させなければならない。現実世界で夢の主人公が寝ている間は起きていなければならないし、主人公が起きたら寝てもいい、というわけだ。そんな夢の世界に入ってしまった僕は様々な人の夢の中を体験することになる。普段から夢の世界を生きる人は夢の世界の中の情報しか知らないが、夢の世界に入り込んでしまった僕は、夢の世界の主人公が現実世界でどのような暮らしをするのかをみることができる。その仕組みは、夢の世界で僕が目を瞑ると、夢の世界の持ち主である人の目がテレビカメラで、それで送られてくる画像が僕の瞼の裏に写るというものだ。現実世界の状況を知れた僕は、夢という、現実で目覚めた時に忘れてしまうようなかすかな記憶にしか残らない場で、少しでも現実の状況をよくできないかと試みる。例えば、自殺行為をしようとしてしまっていた女性が夢の中で死の国へ連れて行かれそうになるのを助けたり、赤ちゃんの夢の中でワニに襲われそうになる赤ちゃんを助けるべく体を張って戦ったり、といったものがあげられる。様々な夢の世界を行き来する中で、常に現実世界に戻ることを望む少年であったが、なかなか現実の世界には戻れない。最後に目覚めた時にやっと現実世界に戻れた時に、ここが僕の生きる世界だと悟るのであった。この物語を読み、夢の世界に実際に行くことができるという、言ってしまえばファンタジーのような物語が、現実と夢の世界がうまく繋がっていることにより、少し現実味を帯びて考えることができた。この物語のように、夢の世界を実際に旅するような経験はできないかも知れないが、近い未来、夢を映像化し、その夢を科学の力で操作することができるようになる可能性があるように感じた。また、今現在あるVRなどのように、夢=バーチャル空間、仮想世界のようなものと捉えると、現実と夢との境界線のようなものを測るのが難しくなってしまう恐れがあるのではないかとも思った。

#デザインフィクション演習