2018年12月21日 01時29分

技術の発展と無自覚な死

宮内

レイ・ブラッドベリ/伊藤典夫訳 「十月の旅人」

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親の本棚にあったものを適当に東京の自分の家に持って来ていて、ずっと読まずに積ん読してあったものを、今回SF作品を読むということで思い出し、読むことにした。

作品冒頭で何者かに追われていた主人公は姿を隠すために謎の店に入った。店主に声をかけられて、あわてて商品を買いにきたふりをするために適当に話を合わせていると、「こんなにも商品を理解した客が来てくれたのは初めてだ!」と店主は喜び、その流れで一体何のために使うのかもわからない無機質で大きな機械を買うことになってしまう。店主は「むやみにこれで人を殺さないでくださいね」などと訳のわからないことを言ってくるが、ただその場をやりすごしたかっただけの主人公はまたわかった風な返事をして、よくわからないマシーンを、車にのせ家まで帰った。家に帰った瞬間、待ち伏せていた追っ手に銃を突きつけられてしまう。絶体絶命に追い詰められた主人公は、とっさに「机の上にある機械は電子ビームで人を簡単に殺せる殺人マシーンだ」とはったりをかけ、追手の隙を作ろうとしたが、次の瞬間、追手はもう死んでいた。機械が本当に電子ビームを出して追っ手を殺していたのである。とんでもないものをもらってしまったと、主人公は店に機械を返しにいくことにした。しかし店主は「何千年もかけた研究の成果が誰にも買ってもらえなくて困っている、お代は満足したらでいいから是非理解のあるあなたが何個かもらってくれ」と言って様々なガラクタの入った箱を渡してきた。仕方なく箱をうけとり車にのって帰路についた主人公は、好奇心から箱を漁りパイプのようなものを見つける。口にくわえてみると、煙がでてきて、いかにもパイプのように吸えたのだった。とその時、後ろをつけていた車から銃を向けられ狙われていることに気づいた。またもや危機に迫られた主人公はさっき殺人マシーンを返してしまったことを悔やんだが、ふと思いつきガラクタを漁り、「とにかくあいつを殺すんだ!」と叫んで外へ投げた。そのライターの形をしたガラクタは外に出ると羽を広げ飛び、相手の車にくっついて次の瞬間、爆発した。その時主人公はやっとあの店主が発明したものの意味がわかったのだった。それらは全て、見た目は日常にありふれた小物の形をしていたが自分の思い通りに動く、一種の魔法のような機械だったのだ。家に帰り、ほっと息をつきながらも主人公の心は晴れなかった。パイプを吸いながら「この世は常に憂鬱だ、いっそこの頭を銃弾が貫き、一瞬で死ねたらいいのに」そう考えた瞬間、主人公は頭から血を流し、倒れ、物語は幕を閉じる。足元には銃弾を放ったパイプが転がっていた。最後のシーンで咥えていたパイプはあの店主からもらったマシーンだったのである。

ここで描かれている技術は、「想像したものが何でも可能になる機械」だ。DFの観点から考えながら読んだことが大きく関係したとは思うが、この小説は、人間が効率化、自動化を追い求める技術の進展の先にたどり着く未来を暗喩していると思った。主人公が、機械についてよく理解せず、その意味や機能について把握できないうちに物語はトントン進み、最終場面を迎える。これは現代の人々が次々に現れる便利な新商品に、その意味を深く考えることもなく安直に手を出す状態と大差ないのではないだろうか。そんなことを考えながら読み進め、主人公が無自覚に死んでしまった最後の場面を読み終えた後、私は背筋の凍る思いがした。

##デザインフィクション演習